第9回全国マイクロウェーブ合同ミーティングに出席して

JA6DM 於保 武志

 「第9回全国マイクロ合同ミーティング」が平成15年10月19日(日)に昨年と同じ芝弥生会館で開催され,全国より約70名の参加者がありました。
 前回までは,MWACの主催でしたが,今回はMWACYAMA会の共同開催で,MWACのJF1VAS成沢OMとYAMA会のJA1FS和田OMの2人が演壇に立ち開会宣言をされました。 恒例の講演はパソコンとプロジェクターを使用して行われ,その内容は次の通りです。
  • 249GHz F3 トランシーバー製作と評価結果の紹介
      JA8CMY 増田OM
    249GHz F3 トランシーバー
    • 今回の設計で,重点を置いた項目は,原発振を250MHz台とし,待ち受け受信が可能な周波数安定度 ±5KHzに。
    • 数km通信可能に 送信出力 -20 dBm 100μW,受信入力 -85 dBm(S/N 10dB位)
    • 主要部分は自作を目標
     24.9GHz 0.4Wで49.8GHz 50mWの2逓倍器には,MA48701Eを使用。放熱の点で2個壊したのでM4ビスに直接ハンダ付けし放熱を良くしている。
     電源投入後の周波数安定度は,4分で±10kHz,5分で±5kHz,6分で±3kHz 以内。 受信性能チエックには,スペアナのLOを利用した。
  • CUTE-I Cube Satを打ち上げて運用を開始
      東京工業大学 松永研究室 此上一也・尾曲邦之
     大学生の手で人工衛星を作ろうとの話しがあり,YAMA会の皆さんにお世話になり,6月30日に打ち上げました。 現在100日を経過しており,毎日早朝3回,夕方3回東京上空を通過しております。
     Cube Satとは,学生による宇宙工学の教育を目的とした衛星です。 米国のスタンフォード大学のロバート・ディーブス教授によって提案されたもので,もともと日本とアメリカでスタートしたキューブサット計画ですが,今では日本・米国・カナダ・デンマーク・台湾・韓国・ブラジル・タイ・ヨーロッパ各国といった世界中の大学が参加して6月30日にキューブ・サットがロシアのPlesetsk宇宙基地より打ち上げられました。 6個のキューブサットと他の2つ合計8個の衛星全部が無事放出されました。CUTE-TはJQ1YCYのコールを取得しました。 ビーコンは144MHz帯のCWで,TXは430MHz帯のFMパケットとCWの2台です。受信報告は,世界各地から700通頂いています。 CWやFMパケットで受信して頂いた方には,ベリカードを発行中です。
     東京工業大学の松永研究室では,次の衛星を計画中です。 いろいろ知りたい方は,ホームページが「http://lss.mes.titech.ac.jp/ssp/cubesat/index.html」となっていますのでそちらをどうぞ見て下さい。
  • 簡易スペアナアダプターGigaST
      青山秀治OM
    GigaST解説の青山氏  99年にGigaST バージョン1を開発し,Ver.2 ,Ver.3 と開発しているものです。 Ver.1は2GHzまでのもので,ソフトはまだWindowsは無く,MS-DOSでした。 当時は,基板を作る技術を私は持っていませんでしたのでユニバーサル基板でした。 この,スペアナを作った時は,私は皆さんにこのスペアナが興味あるとは全然思っていませんでした。 電子工作の人達が集まる東京の会で発表して,反響が大きくすぐ分けてくれと言われビックリしました。 Ver.2 になってから,Windowsを少し使うようになり,周波数帯も4GHzまでとしました。このときは,バンドが4バンドに分かれていたのでバンド切り替えは,前面コネクターを手で接ぎ替えなければならないものでした。
     Ver.3 になってから,バンド切り替えは自動にしました。 キットとしては,ケース無しの基板の状態で出しているので,ケースは皆さんがそれぞれ好みのものに納められています。重さが700g でサイズは90×170×50です。 どんな波形が見られるか例を上げての説明の後,時間がきたのでこの説明の続きは,12月23日発売の「ハムジャーナル」を見て下さいとのことでした。
  • ドイツのアマチュア・マイクロ波の雑誌DUBUSへ皆さんの記事を
      JH6RTO/7L3TDU 福島OM
     ドイツのマイクロウエーブ誌DUBUSの中の「マイクロウエーブ・ジャパン」の頁を日本から発信してもらえないかとの話が新潟のJA0BQU阿部さんよりあり,受けた次第です。 皆さんからの記事をお願いしたいと思い出てきました。
     記事は,一部ドイツ語もありますが,ほとんどが英語で書かれています。  DUBUSへ投稿される方は,日本語でOKです。 私のメール「jh6rto@m.ieice.org」宛てに送って下さい。
     また,DUBUSを購買されたい方は,1部1,000円位です。 JA3MKS長岡隆一郎さんへ申し込んでください。
     宛先は,〒561-0861 豊中市東泉丘2丁目15番18-704
     メールは「mks@x.age.ne.jp」です。
  • レイン・スキャッター通信の話
      JI1CBS 小林 OM
     4年位前に,長野のJA0RUZ関崎さんより8月の夕方10GHzで横浜の信号がフルスケールで良く聞こえるよと話がありました。 しかも,習志野市のJA1CUY菱木さんの信号も同一の方向で強力でこれは何だろうといったことがきっかけでした。 3年程前,私が毎年新潟のスキー場へマイクロの設備を持って行って,コンテストを主体にやっていたんですけど,せっかく新潟まで行くので新潟の阿部さんにメールを打ちまして,新潟でもぜひ高い周波数でQSOをやりたいとゆうことで新潟の南側に有る山に行っていただいて5GHzと10GHzでQSOさせて頂きました。 そのQSOの最中に横浜のJA1CYC下村さんから横浜でも新潟の電波が聞こえるよとの連絡がありました。
     その時は,移動で時間が無かったので,翌年また阿部さんにメールを打ち,今年もまたお願いしますからと云うことでお願いしたところ,明日は仕事で東京へ行かなければならないので移動できないからと固定からお願いすることになりました。 台場からビームを新潟へ向けてQSOさせて頂きましたが,そのQSOが横浜でも良く聞こえるよと云うことになりました。 毎週5GHzのロールコールがありますが,そのとき新潟まで電話し今週もう1度やってみましょうとなり,ロールコールの後やったらまたできました。 これは何だろうと話をしていたときに,ひょっとしたら雨雲にぶつかってQSOできているのではないかとの話になりました……と東京電力の雨雲の画面を出して,途中に雨雲がある時に両方から雨雲にANTを向けるとQSOできることがわかりました。
     Yahoo Japanチャットルームを利用して,連絡し合いながらQSOすれば,あちこちで雨雲を利用したQSOができるのではないかと思います…と話をして頂きました。
  • 各エリアの現況と大移動運用会の報告
    • 北海道地区
       JA8CMY 増田OM

       北海道は,4・5年前まではマイクロは閑古鳥が鳴いていましたが,最近は毎年1回59会を兼ねたGHzの愛好会ができ,情報交換ができる様になりました。 現在は5GHzや10GHz・24GHzそして47GHzをすこし手がけている方もある様です,北海道はエリアが広く札幌を中心に旭川・帯広外全体で50名くらいでしょうか。 これから,どんどん中味を濃くしていきたいと思っています。
    • 九州地区
       JA6JNR 渕OM

       九州から2人まいりました。 前回の全国マイクロ移動運用では,北九州グループは北の方に集合して,大分や鹿児島のグループも集まり韓国との10GHz ATV QSOをやりました。 韓国とは前回は5月にやっているので,5分かかりませんでした。
       私共は秋月のテストパターンに全員コールサインを入れているので,2mで韓国と連絡をとり,JA側から10GHzの電波を一斉に発射し,2〜3分でその内の1局が向こうで確認できたので,他は全員電波を切り両方の方向合わせをし,5分位で全員できました。
       JA6DM 於保
       毎回このミーティングに参加しています。 今回の全国マイクロ移動運用では,今JA6JNRさんから話がありました様に,九州の皆さんは韓国向けスケジュールのため,皆さんの移動地点が長崎からは山の陰でQSOできないので,マイクロウェーブ・ナガサキとしてのグループ参加は中止しました。 そして,私は佐賀の天山南側駐車場へ移動し,1.2GHz・2.4GHz・10GHzでQSOしました。
       次回の九州マイクロミーティングは,大分の担当で4月の第3土曜日と日曜日に温泉で有名な別府市の近くで開催予定です。
    • 新潟地区
       JA0BQU 阿部OM

      0の方は最近やったので云えば,47GHzと75GHzを数10kmですが,また,やり始めました。 以前は150kmで47GHzをやりましたが,それ以上のスパンが新潟には無くて,山へ足で登ればあるのですが皆年になって,車で行ってやれる所でないと皆いやになりまして,そのへんでまたステップとして47・75・135GHzをやってみようと思っています。 先程小林さんからRSの話があったんですが,10年位前から5GHz のANTは上がっていましたが飛ばないだろうと云うことでローカル相手の道具となっていましたが,最近チャットで連絡ができる様になってから飛躍的につながる率が上がりました。
       新潟から横浜は230km位,JA9とも見通し外ですが220km位です。 私は,どちらかと云えば自作の方なので,自分が作ったものを移動の時に持って行けば他人と比較できるので,また,違った意味で良いのではないかと思っています。
    • 長野地区
       JA0RUZ 関崎OM

       長野県から4名参加しました。 長野はご存知の通り山に囲まれております。 ローカルとやる時も山に反射させないと,直接波による通信は殆どできない状態です。
       JA0DPO 寺島OM
       山に囲まれた場所なので山にぶつけたり,山の屈折を利用してQSOしています。
       JH0QDH 石坂OM
       昨年は初参加で1等を頂き有難う御座いました。今は2.4GHzまでしか出られません。
       5GHzでは,今開けているから聞いてみなと云われ,部屋の中でSMAのピンに1・2cm位の針金を付けて小林さんの信号が聞こえ,これには驚きました。
    • JA1地区
       JA1CUY 菱木OM

       5GHzと10GHzのロールコールを毎週やっております。 5GHz は日曜・10GHzは金曜です。 RSで長野や新潟までFMで毎晩の様に行くんですよ。 毎晩チャットルームを作っているので簡単に入れますからどうぞ。
       JI1CBS 小林OM
       土曜の夜8時より2.4GHzのロールコールをやっています。 マイクロ波の活性化の1つの方向として,95年9月より始めて昨日も408回目をやったところですがFMとSSBでやっています。 三重の松崎の信号は毎週聞こえますが,特に台風が来る時は,ものすごい強さで聞こえます。
第9回全国マイクロウェーブ合同ミーティング 記念写真

※ 今年のミーティングで私が興味をひいたのは,13GHzまで測定できる山本OM開発のポケット・カウンターと,パソコン使用のGigaSTスペアナでした。 詳細については以下で。

GigaSt簡易スペアナ

 今年の第9回全国マイクロウエーブ合同ミーティングで,開発者の青山氏がパソコンとアダプターを使って,4GHzまで測定できる「簡易スペアナGigaSt Ver. 3」について講演をされました。 青山氏は,今まで2GHzまでのものを開発されて,それを何人もの方が使用されていましたが,もう少し測定範囲を広くとの皆さんの要望により4GHzまで測定可能に改良されたものです。
 GigaSt簡易スペアナについての記事特集が12月発売のハムジャーナル108号(CQ出版社)に掲載されています。 開発者の青山OMのホームページ(http://park7.wakwak.com/~gigast/)の「Giga Site」のページへ行き,その中の「第3世代の4GHz簡易スペアナ・アダプター(トラジェネ付き)」をクリックし,「GigaST Ver.3の開発で」のページで,各部の写真・いくつかの測定画像例・仕様・完成例等を見られます。 「4GHz簡易スペアナで24GHzを観る」,「JN1AYV's HAM SITE」,「スペアナアダプター」,「4GHz簡易スペアナで24GHzを観る」のページでは,BSコンバーターを使用した5.7GHz・10GHz・24GHzの測定方法や測定波形などを見ることができ,参考になります。 興味のある方は覗いて見て下さい。 開発者に確認したところ,価格は2万7000円で,現在は注文しても1ヵ月半から2ヵ月後になるそうです。
 この簡易スペアナとJF1VAS成沢OM開発の10GHz・24GHz・47GHz用3バンドMIXを組み合わせてJN1AYV 岡本OMは47GHzまで測定されているようです。

13GHzポケット・カウンター

13GHzポケット・カウンター デモ  次に山本氏が開発された,500MHz〜13GHzまで測定できる超小型カウンターについてお知らせします。
 本体のみの完成品で,9V〜15V 100mA 動作で,価格は1万8000円です。 私もMWACの成沢OMより入手し,タカチのYM-90(W90 H20 D60)のケースに入れて使用しています。 液晶表示で小型のうえ,13GHzまで測定できるので,移動運用でも便利です。

タカチYM-90へ13GHzカウンターの実装方法
  JA6DM 於保武志

 タカチのケースYM-90はサイズがW90・H20・D60となっており,13GHzカウンターを入れるには高さが不足です。 Wはぴったりで,Dは余裕があります。しかし,1つ上のサイズのケースは大き過ぎます。そこでYM-90に無理に入れました。 このケースに実装する為に幾つかの工夫をしています。
  1. 液晶表示部をケースの上部をくり貫いて外へ出す。
  2. 上へ突き出した2mmの周りを2 mm厚のアルミ板をくり貫いて被せる。
  3. Aのアルミ板と同じサイズの0.5 mmアルミ板を切り抜き,2つをエポキシ接着剤で張り合わせ,表示部の窓の部分だけを切り抜く。
  4. 本体は,ケース上部へ表面よりネジが出ないように皿ネジを使用する。本体を固定するときは,液晶表示部まわりの回路露出部分がケースとショートしないように,厚紙を貼り付けておく。この厚紙の高さでケースより出る表示部の高さが調整できる。
  5. A・Bで作った表示部のマスクは,ネジが表面に出ないように2 mmの皿ネジを使用してケース上部に取り付ける。
  6. Wは90で殆ど余裕が無いのでRF inのSMAコネクター穴は少し大きく空けておかないと,本体が取り付けできません。
タカチYM-90へ13GHzカウンターの実装方法 タカチYM-90へ13GHzカウンターの実装